「デリケートなZ世代」が組織の救世主となるまで:尾身茂先生と語る次世代リーダー「やわら人材」を育む道筋

学習支援塾ビーンズ 塾長長澤啓 認定NPO法人全世代 代表理事 尾身茂
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企業にとって最大の関心事の一つである「Z世代の社員・就活ををおこなう学生」のリアルな姿について、私たちが提唱する新しい二つの概念

  • “自分が嫌いで、環境も嫌い”な「自己閉塞(じこへいそく)」
  • 仲間に寄り添い、ときに背中を押す強さと根気を併せ持つ「やわら人材

の説明を軸に深く掘り下げていきたいと思います。

「最近の若手は、打たれ弱い」
「優秀だけれど、どこか冷めているというか、踏み込んでこない」

ニュースで「若者の離職率」や「メンタル不調」のデータを見るたびに、

「これってウチの現場でもおきてることかも」

と、そんなふうに感じることはありませんか?

不登校や悩める10代の支援を10年続けてきた学習支援塾ビーンズは、確信していることがあります。

それは、若者世代の

“心優しいけど、なかなか周囲と打ち解けてくれないような感じ”
“優秀だけど見え隠れするデリケートさ”

は、彼らの個別の課題や、ましてや甘え…といった問題で片付けられるものではなく、
深い心理構造に根ざした現代社会の構造的課題であるということです。

不登校に限らず学校に通学していても、進路を考えることに極度の不安を抱え、

「(頑張れば)自分なら課題を達成できるだろう」と信じる自己効力感と自尊心を失っている状態の子ども達

彼ら悩める10代たちが抱える「しんどさ」とZ世代社員が抱える「しんどさ」。

この二つは驚くほど似ており、かつ「しんどさ」が生まれる背景は地続きであるというのが、ビーンズの考えです。

今回は、第二回「全世代に感情力を育む会」において

主催の認定NPO法人 全世代尾身茂代表理事と学習支援塾ビーンズ塾長の長澤とが次世代リーダー育成の核心に迫ります。


まずは長澤が、悩める10代たちが抱える「しんどさ」と、Z世代社員が抱える「しんどさ」の軸にある「自己閉塞(じこへいそく)」という状況を説明し、彼らが次世代のリーダー像である「やわら人材」になるまでの必要なステップについて語ります。

目次

データが示すZ世代の「生きづらさ」の現在地

長澤

まず、彼らが何を求めているのか、何に不安を感じているのか。具体的なデータから見ていきましょう。

「成功」よりも「失敗しないこと」を望む

企業選択の理由において、長らく不動の1位だった「自分のやりたい仕事」が転落し、代わりに「安定している会社」が1位に躍り出たというデータがあります。
これは、彼らが「成功すること」よりも「失敗しないこと」を何より大切にしていることの表れです。

また、働きたい職場の条件として「活気がある職場」の人気が低迷し、「平和なチームがいい」という声が多く聞かれます。

彼らが求めているのは、成長痛を伴う活気ではなく、

「心理的安全性」に裏打ちされた穏やかな環境

なのです。

理想の上司像:「熱くて結果にこだわる上司」は避けられる!?

学習支援塾ビーンズ
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「熱くみんなを引っ張る!」「結果にどこまでもこだわりぬく!」――。

かつて理想とされたこういった上司の姿は、今のZ世代社員からは「ちょっと、距離を置きたい…」と思われているのかもしれません。

ですが、

「熱い上司であることをやめてください」
「とにかく若者たちを優しく接してください」

申し上げたいわけではありません

上司が熱さや結果にこだわる姿勢を見せることは若者たちにとっても大切です。

長澤

では、どうすればZ世代社員が上司の熱さを受け入れ、活躍する人材になるのか?
これについては、こちらの記事をご覧ください!

深刻な孤独とメンタル不調

気がかりなのは、20代社員のメンタル不調経験率の高さです。

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(出典:若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査, (株)パーソル総合研究所, 2024)

さらに厄介なのは、その不調は上司にとって「不意打ち」のように訪れることです。

昨日まで元気だったのに、急に来なくなった

というケースが後を絶ちません。

実際、20代の3割以上が「抱える孤独が深刻」と回答しており、この「孤独」を抱えている正社員は、「転職意向が高い」ということも示唆されています。

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出典:今こそ企業が向き合うべき『孤独・孤立』, (株)野村総合研究所, 2025)

彼らは、組織の中にいても、深い部分で他者とつながれず、「ビクビク社会」の中で孤立を深めているのです。

地続きの現実:Z世代と10代の「ココロ」の深層

「今の10代は将来の20代(若手社員)」です。

若手社員の定着と活躍を長期にわたって実現したい企業の方こそ、10代のココロと進路観について知っておく必要があります。

ここで紹介するデータを見て、「今までの若手育成の手法はあと数年で通用しなくなるな…」と察する方もいるでしょう。

まさしく、その通りです。

出生数は過去最低・子ども若者の自殺は過去最多水準

残念ながら、小中高生の自殺者数は過去最多です。

出生数が毎年過去最低を更新し続けている、つまり子どもの実数は減っているにもかかわらず、です。

2024年の小中高生の自殺者数、529人で過去最多…女子が初めて男子を上回る」。

子ども・若者をしんどくさせてしまっている「何か」が起きていると考えない方がおかしいでしょう。

不登校:中学生の5人に1人は不登校および不登校傾向

過去最多を更新し続けているものは他にもあります。

それは、「不登校の数」です。

繰り返しますが、子どもの数は減っているのに、です。

そして、不登校傾向(※)がある子ども(中学生)も含めると、今や5人に1人というデータもあります。
(※不登校ってほどではないが学校を休みがち、別室登校や部分登校など)

これは2023年のデータです。
あと6年もすると

  • 「学校を休むのが当たり前」
  • 「不登校が(マジョリティとまではいかないが)まったく珍しくない」

という世代が大卒の社員として入社してきます。

Z世代のしんどさの根っこにあるもの:「自己閉塞」

なぜ、これほどまでに彼らは傷つきやすく、孤独なのでしょうか。

その根源にあるのが、長澤が提唱する

「自己閉塞(じこへいそく)

という概念です。

自己閉塞とは:自分も環境も信じられない状態

自己閉塞とは、一言で言えば

自分も環境も嫌い(苦手)であるため、
自分を守ることにエネルギーを費やし、他者とつながれない状態

を指します。

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  • 特徴① 自分が嫌い(自己否定感):「どうせ大したことない」「期待されるのが怖い」
  • 特徴② 環境が嫌い(他者不信):「どうせ分かってもらえない」「傷つきたくない」

この二つが重なると、「関わっても無駄、傷つかないためにやめよう」という思考が働き、負のループが固定化されてしまいます。

自己閉塞に陥ったZ世代社員は、自分を守るための行動、すなわち自己閉塞行動に出るようになります

自己閉塞行動の具体例としては、

  • できるだけ目立たないように振る舞う
  • 失敗を恐れて指示待ちになる
  • 本音を絶対に出さない
  • 信頼を犠牲にしてでも逃げる

といったものがあります。

これらの行動が守ろうとしているのは、いわば「自分の短期的な自尊心」です。

しかし、この“守り”の姿勢は、長期的には環境とつながる機会を失い、「やっぱり自分は他人から/環境から愛されない」と感じてしまうため、むしろ自分を苦しめることになります。

自己閉塞の負のスパイラル
  • 自分も環境も嫌いになる
  • 傷つかないように自己閉塞行動をとる
  • 他者や組織からの信頼・共感が得られなくなる
  • 「やっぱり自分はダメだ」「やっぱり環境は冷たい」と再確認
  • さらに閉じこもる

人間関係を機能で捉える「道具的世界観」

さらに深刻なのが、彼らが無意識に抱いている道具的世界観です。

これは、自分自身や他者を「機能」や「役割」として過度に捉え、まるで道具のように扱ってしまう世界観です。

道具は、「期待→制御→消費」され、役に立たなくなれば「廃棄(関係解消)」されます。

人間にとって、「用済み」として他人から関係を解消されること(無視される/切り捨てられる)ほど、深く傷つくことはありません。

特に、いったん期待された上で切り捨てられる「関係解消」は、大きな痛みを伴います。

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Z世代の若者は、この「捨てられる痛み」を恐れるあまり、目立たないように振る舞ったり、過度な謝罪をしたりといった自己閉塞行動をとります。

共通するのは、

「捨てられたくない」というネガティブなモチベーション

です。

しかし皮肉なことに、その「守り」の姿勢が、かえって周囲との心の距離を遠ざけ、
環境(他者・組織・社会)からますます愛されなくなってしまうという、皮肉な結果を招くのです。

あわせて読みたい
【第2回】自分も他人も「道具扱い」!? ── Z世代社員のしんどさの“根っこ”とは? 具体例から理解したい方はコチラ はじめに 前回の記事(↓)では、Z世代社員の多くが陥っている「自己閉塞」という課題について解説しました。 https://youth-co-lab.com...

Z世代のポテンシャル:「やわら人材」としての可能性

ここまで読むと、「Z世代は扱いづらい」「組織にとって負担だ」と思われるかもしれません。

しかし、ここからが本題です。

実は、デリケートな彼らこそ、未来の組織を救う「やわら人材」の卵なのです。

長澤

彼らが「感情力(emotional capacity)」を身につけ、成長/変化することで、”これからの組織”にとって、最も大事な存在になり得る

と、私は確信しています。

「全員活躍型組織」の鍵「やわら人材」

深刻な人手不足、勝ちパターンの崩壊。

こんな時代に「やる気のある人だけ育てる」という従来型の育成方針は通用するでしょうか?

答えは明確にNOです。

その理由は大きく2つあります。

  1. 人手不足だからこそ、成長が遅い人にも活躍してもらう必要があるから
  2. 評価尺度が変化しており、「今は冴えない人」が将来のキーパーソンになる可能性があるから

つまり、今後の企業には「全員活躍型組織」への進化が求められます。

その進化を支えるのが、「やわら人材」(強くて優しい人材)です。

「やわら人材」とは?

やわら人材」とは、どんな人も見捨てず、課題を抱えた仲間に寄り添い、共に走れる強さと根気を持つリーダーのことです。

私が提唱する「やわら人材」とは、一言で説明すると「強くて優しい人材」のことです。

特徴①:どんな人も見捨てない。課題を抱えた仲間に寄り添い、共に走れる

特徴②:優しさだけでなく、背中を押す強さと根気もある

上記の特徴=強みのタネを持つZ世代が「感情力」を身につけ成長していく。

そして高い感情力を備えた「やわら人材」が組織の中に増えれば、「育てにくい人」も見捨てず、「活躍の芽」を育てられる文化が醸成されます。

デリケートなZ世代が「やわら人材」の卵である理由

実は、この「やわら人材」としての素質を最も秘めているのが、いま「デリケート」と言われているZ世代社員たちなのです。

デリケートなZ世代社員は、単なる“手のかかる若者”ではありません。

彼らの中には、これからの組織を支える「やわら人材」としての芽吹きうるタネが秘められています。

なぜでしょうか?それは・・・

・ 彼らは「しんどさ」や「怖さ」を身をもって経験している。だからこそ、他者のつらさにも敏感に寄り添えるから。

・ 他人の視線や評価に過敏であるということは、それだけ“他人をよく見ている”ということでもあるから。

この「観察力」と「共感力」は、次世代のリーダーシップに必要不可欠な要素であり、やわら人材の根幹です。

「繊細な若者」も周りのサポートを得て、経験を積み「感情力」を育てていく。
そして「強くて優しいリーダー(やわら人材)」としてのポテンシャルを開花させていった例を私は何度も目にしました。

だからこそ組織は、焦らず、見捨てず、彼ら「繊細な若者」を育てていく姿勢が求められます。

もちろん、そのままでは「繊細な若者」たちは組織にとって負荷になる瞬間があるのは事実です。

彼らが成長し、やわら人材として羽ばたけるようになるには、

長澤

組織のマネジメント側が、「繊細な若者」たちの内側の世界観を理解したうえで、彼らの感情力を育む適切なサポートをする必要がある

と考えています。

閉塞を打ち破る鍵:尾身茂氏が語る「自分の檻を超える」経験

若者たちへのメッセージ

尾身茂さん

長澤さんから「若者が他者と比較して、そして他者を恐れる」という話がありました。


そして、「”比較”と他者への恐怖から、失敗を恐れ、失敗する経験も得づらい…」ということでした。

もちろん、今の若者たちだって失敗する経験自体はあるのでしょう。

ただ、

失敗することへの恥ずかしさや恐怖が強くなっている

という背景があるということだと思います。

すると若者たちは、

まだ起こっていない未来の失敗を思って行動できなくなる。
そして、そんな自分も深層心理的には良しとしてない。

言い換えると、若者の「自分が嫌い」という気持ちの底には「行動できない自分は嫌い・だけど失敗したことを考えると行動するのも怖い」という矛盾があって、そこが彼らの状況を難しくさせている…これが長澤さんの話の軸としてあったと思います。

そういった状況の若者の皆さんに(できれば)気づいてほしいなぁと思うことがあります。それは、

尾身茂さん

失敗や傷つきは、決してネガティブな意味だけではありえないということ。必ず人生にとってポジティブな意味も含まれることです。

人生においては、
失敗しなきゃ、先に行けないという場面もある。
失敗して傷つかないと、学べない事柄も多い。

尾身茂さん

失敗して学ぶ…この繰り返しが人生の本質だと感じるのです。

そこからにして、人間と人間の人生はそもそも不完全なものだと考えたほうがリアルで、私なんか、これだけ生きてくると、失敗をしないと絶対に次に行けないという確信めいたものすらあります。

特に人間関係の部分では、人間は、傷ついて強くなっていく=感情力を磨いていく…という部分が少なからずあると思うのです。

尾身茂さん

失敗を含む濃密な経験が感情力の成長につながっていくのですから、若者の皆さんは、いろいろな経験をし、その途中でいろいろと失敗したらいいと思うのです。

そして社会のほうもそれを許容できる社会であってほしいのです。

人生の作用と反作用

これは私の個人的な考えなのですが…苦労も悩みもなくて幸せで毎日充実!なんて人は居ないと思うのです。

恵まれた環境で生まれて(はた目からは)何不自由のない生活をしていても悩みはある。お釈迦様だってそうでした。

もっと個人的な考えを披露すれば、人間の主観の中で感じられる幸せというか、人生の充実感というか、これはトータルで一緒だと思うのです。

つまり、どんな成功者であっても

人間の人生をトータルでみたときは、誰しもどこかで苦労する場面はある

物理で、作用と反作用という法則がありますね。

自分が何か成し遂げたり、何かを得たりすれば、必ずそれは自分に返ってくる

逆もしかり、何かを失敗したり、何かを失ったりしても、返ってくる


その人生のダイナミズムの中で、我々は傷つく、失敗する、成功する。
良かった悪かったと喜ぶ、悲しむ、泣く…

尾身茂さん

それらをひっくるめた経験が、我々の人生をだんだんとポテンシャルの方にいかせるのではないか…と考えるのです。

それが「条件さえそろえば、全部うまくいくことが理論上はありうる」と思ってしまうとしんどいんじゃないかなと感じるのです。

「人間は不完全」という前提

次に、ここも抑えておきたいなと思う前提は

我々、人間は不完全。

ということです。

どんな人も完璧ということはない。不完全。

だからどんな人も失敗する。

これは議論の余地がないぐらい当たり前のことだと思います。

でも、神様は、人間の人生を、わりあいと長くつくってくれていてて。
だから、その中でなんとか帳尻をちょっとずつ合わせていく。

人間は不完全。だから失敗する

そこから学んで、行動を続ける中で時々、成功するときもある

尾身茂さん

その失敗と成功の間で、ゆらゆらゆらと揺れ動いている存在……
それが我々人間だと思うのです。

人間の多様性と共通項

もっと言うと、最初から良い人、最初から悪い人というのはいないと思うのです。

尾身茂さん

つまり、最初から仏のような人もいないし、最初から鬼も蛇もいない…
どんな人間の中にも良い面もあって、同時に邪悪な部分もありますね。


さて、ここから私のサジェスチョンです。

今ここに集まってる皆さんが、

ビーンズでさらに自分自身を解放したい!
(さらに)いい世の中や社会にしたい!

…と願うときに、人の多様性を、目の前のあなたの多様性を認めようというのは素晴らしいと思うのです。

人間は互いに違う

だから、”おたがいさま”として認め合えればよい

確かに人間には、いろいろと違いがあります。私もあなたも違います。

多少偏差値が高い人とか、世間的には環境に恵まれている人もいます。

もっと言えば、背も違うし、靴のサイズも違います。

そういう多様性は事実としてあります。

でも、どんな人にもある共通項もある。

まず根源的なのは、人間は自分で生まれたくて生まれてきたわけではないということ。

みんなそれぞれ、生まれる国、生まれる家庭、男か女かも、名前ですら、自分では選べないのです。

こういったことは、誰でも一緒ですね。

それが仮に

あなたが尊敬する人だとしても
あなたが好きな人だとしても
あなたが苦手な人だとしても
あなたが恐れている人だとしても
あなたのことを非難する人だとしても…

尾身茂さん

どんな人間の中にも、良い面も邪悪な部分もある。
そして、どんな人間も選べない何か”与えられた”運命を生きている。
その部分は、みんな一緒だと思うのです。

「全世代に感情力を育む会」で世代を超える

尾身茂さん

そして社会のことも少し触れておきたい思います。

問題は常にある。
問題のなかった時代はない。 
問題のない社会もない。 
悩みのない人もいない。 

これが人間と社会のリアルだと思います。

さきほど、長澤さんは

長澤

若者が元気がなくなっている…
「自分が嫌い」「環境も嫌い」な「自己閉塞」の状態にある


そして、この状況は個人の努力だけでは解決しようがないと…と指摘されました。

ここで私は

全世代に感情力を育む会」が、その解決のカギになる

と思っているのです。

なにより、私にとって、この会に参加は楽しみなのです。

ここには、東大の遠藤先生とビーンズと認定NPO法人全世代と、皆さんがいらっしゃる。

世代を超えて存在してる。

そして、

若者が抱える自己閉塞の課題、いろんな悩み、そしてどういう背景で(良くも悪くも)今の若者たちを取り巻く状況が生まれたのか?

それをみんなでシェアし、どうやって乗り越えるかを語り合っています。

こんな機会は、今まであまりなかったことで、これはすごい と思うのです。

若者は自分の状況を変えるのか?

尾身先生からの質問

尾身茂さん

ここいる若い皆さんに聞きたいことがあります

まず、皆さんがしんどい状況に陥ったときに
「ふざけんな」
とか
「自分がおかれた状況を蹴飛ばしてやりたい!」
という思いを抱くことはあるのかということ。

もちろん、しんどい状況に長い間耐えることも、ずいぶんと努力が必要なことがあると思います。

一方で、どうせ我慢するなら

ダメ元でいいから、いろいろ試行錯誤していこう!

…もっと言えば

やぶれかぶれだ!
イチかバチかだ!

という感じになることはあるのか?

言い換えると皆さんは、

「今の自分があまり良くないから、もがきたい!」という感じが強いのか
それとも「どっちかというと今のほうがまだ安全だからいい」なのか

ここら辺を聞きたいのです。

私なんか「これは、あんまりいい状況じゃないな」と感じると

「なんとかその状況を変えたい」
「自分を閉じ込める檻を壊したい!」

と思うわけです(笑)
その点、皆さんは、その檻を自ら壊すことも、ちょっと危険だなっていう感覚もあるのでしょうか…。

[岸本さん]

ありえる

元若者そして「エマージング・アダルト」/成人形成期代表として申し上げます(笑)

[ありえる](岸本さん)
大学発ベンチャー企業で活躍するコンサルタント
学習支援塾ビーンズ代表の塚﨑も参加する横浜市立大学Minds1020Lab主催「若者のこころ研究会」メンバーでもある

先生の「檻」という例えを使うと僕たちは…

動物園の檻の中に閉じ込められている動物たちと同じ状況

だと思うんです。

でも、私たちは人間なので、動物と違って檻の外にいる自分を想像できる。

だから、檻の外を俯瞰で想像することによって

檻を出て野生に戻ってリスクとコストを背負って自由に生きたい

でも、いきなりサバンナには戻って自分は生きていけるのか?

というか、野生のサバンナ…社会ってどんなところなのか?

そもそも、檻の中にずっといることはいけないことなのか……?

といった気持ちと常に葛藤していて。

もちろん、檻の中で納得しちゃう場合もあるかもしれないし。

でも、それでいいのか…? 
それではダメなのか?

ってモヤモヤしながら生きていると思うんです。

人と会い、本を読み、自分の檻を越える

尾身茂さん

今、「檻の中」という例えが出ました。
私がその檻の中から出ようとしている皆さんにおすすめしたいのは…

「人間というのはこういうものだ」ということを、経験を通して感覚として知ること

先ほど遠藤先生もおっしゃったけれど、やんちゃしたり、喧嘩したり……そういう濃密な感情の中で他人と繋がる

その濃密な感情の渦の中で感情力は育まれていく。

若い時にそういう経験をいっぱいやっておくことが大事

だけど、今こういう社会になっちゃってるから、なかなかその機会がないというのも分かります。

今、皆さんは、私や私達の世代を見て、

社会の色々なことを知ってて物知りなんだろうな。

だから檻から出て挑戦してられるんだろうな。

と思っているかもだけど、

尾身茂さん

我々だって若い頃は、皆さんと一緒です。

社会のことも、自分のことも何も分かりませんでした。

もし最初から「俺は檻の外の世界のこと全部分かるぞ!」って思っている人がいたら変でしょう?(笑)

年代・意見を越えて出会い・語り、自分以外の視野を得る

尾身茂さん

私の人生の感覚として、
その「何も分からなくて、右往左往している時期」も含めて
かなりいろんな人と話したなぁ」という感覚はあるのです。

先ほどの長澤さんの話にもあったし、ここにいる皆さんに教えてもらって分かったことは、

我々の頃に比べると、皆さんが付き合う範囲は非常に狭い…ということです。

翻って私達の世代は、

尾身先生世代の特徴
  • まず同世代の人口が多いこともあって、友達の人数が多い
  • 意見の違う友達ともどんどん話す。もちろん喧嘩もあたりまえ
  • 上の世代の人とも話す(学生時代には教授に議論を吹っかけたり(笑))

仲間との衝突も、上の世代へ突っかかりもありました。

でも、今思えば、それがよかったと思うのです。

自分以外の視野に出会える。
自分が今まで経験したことのない、違う反応に出会える。

それで、「えっ」「なんだこれ?」と戸惑うこともたくさんありました。

でも、他人と話して戸惑うことは決してネガティではなく、むしろ正解だと思うのです。

なぜなら、あなたがいる世界…「檻の外の事物」に触れたわけですから。

仲の良い仲間内だと、同じ気持ちを共有するということはできますが、似たような視野を持ち、世界観を持っている者同士のつながりだけだと、自分がつくった檻の中から、なかなか出ていけない…という課題もあります。

若いうちにその檻から飛び出る。他の世界に飛び込む
それには、いろいろなタイプの人で出会うことが必要

あと、嫌味に聞こえたら悪いんだけど、本も読むのも大事だと思うのです。

本を読むことで得られる人類の知恵というものがある
本を通して人類の知恵に触れることで「今の自分がすべて」という感覚になりづらくなる

「将来が怖い」
「他人が怖い」
「なんか不安」

こういったことは、すべて「今の自分の感情」で、

こういったことに悩むのは誰しも当たり前…なんだけど、それに過度に振り回されて疲弊しきってしまうのは今のこの瞬間の自分の感情が全て」みたいなところから出発しているのだと思うのです。

そこで、自分とは全く違う他人との出会い、そして読書を通して得られる人類の知恵と出会うことで、

「今の自分」以外の他の視点を持つことで、自分自身を相対化して捉えるキッカケになると思うのです。

内田先生も仰っていたけど、自分自身を相対化し、俯瞰するクセを持つことで「感情力」は育っていくのですよね。

尾身茂さん

皆さんの人生はいろいろあって。私だっていろいろあって。
そして人間は皆いろいろある。

仮に今、皆さんが何かしらに深刻に悩んでいるとして、

今の自分は悩んでいる。悩むべき理由もあって…これは確かですね。

一方、私達は、今この瞬間の自分の感情を中心として悩んでいます。

そこで、自分からちょっと距離を置いてみるクセを持ってみるとよいと思うのです。

自分以外の第三者から見たときに、自分がおかれた状況はどう見えるか、どう評価されるか。この視点を持ってみる。

別の視点から自分の状況を眺めたら、自分の置かれた状況は大したことない(かも)しれない…そして、

本を読むことで、そういう感覚を得ることができる。

その点、今日この場に色んな人が来ていることは非常にいいことだと思うのです。

色んな世代、立場の人で集まって、遠藤先生の理論を聞き、私のようないい加減な男の話を聞き(笑)
それも含めて皆さんが、いろんな人と出会う…

尾身茂さん

自分以外の視野に出会え、自分が今まで経験したことのない、違う反応に出会え、自分のポジションを相対化できる…これは感情力にとっても大事なことだと思うのです。

いろんな人間も同じ人間

尾身茂さん

いろいろなタイプの人と出会い、本を読んで、
自分という存在を自分の中で相対化していく…

すると自分のことだけではなく、他人のことも誰のことも、人間というものを、そんなに恐れることは少なくなるのでは、
大げさに言えば、世界の見え方が変わってくると思うのです。

もちろん、さっきも言った、背の高さや、靴のサイズなど人間同士のパっと見の違いはありますね。

でも、人間理解が深まってくると、パっと見で違う人、パッと見の偉い人だって同じ人間だということがだんだんと分かってくるのです。

いろいろな部分で、違う人たちがいる

そして、それぞれに失敗も悩みもする


例えばですけど、大国のリーダーだって、しょうもないところはごまんとありますね。

でも、それに目くじらばかり立てても仕方ないと思うのです。

どんな人だってしょうもないところはあります。我々、人間は不完全なんだから、当たり前なんです。
そして、そういう不完全な人がリーダーになっているのです。

ーー尾身先生はいろいろな政治家とかリーダーと会ってるけど、どうでしたか?

それは……この場だから言うけど、今の日本のリーダーたちの中には、たまたまそういう家柄に生まれた。

だからリーダーになった…という人もいらっしゃいますね。

もしかしたら、周りからは「家柄に恵まれてすごい・うらやましい」と見えるかもしれません。

しかし、

そういう人でも悩みはあります。当然あるんです。

もちろん彼らはリーダーとして、もしくはリーダーになろうとして日々、努力されています。
ただ、ある種の馬鹿力というか蛮勇さみたいな活力はないことが多いと思うのです。

なぜなら、それまで全部環境から準備されてきた…つまり小学校、中学校、大学、そこから留学、そこから仕事も周りからレールとして準備されてきた、ずっとある意味で守られてきた人生だからですね。

そうなると、今更、自分の意思でそのレールから外れて「リスクをとって別分野で挑戦してみよう!」とはなりづらい。
そういう構造の中で生きているわけです。

それは悪い意味だけでは決してないんです。
今まで自分を守ってくれた、支えてくれた周りの人への恩義。
そしてその恩義を感じやすい素質もあるってことですから。

でも、自分がリーダーになった時、直面する非常事態とは自分の檻の外、自分の認識してきた世界の外からやってきます。
非常事態が自分の檻の外からやってきたら、それはしんどい。誰だって悩みます。

尾身茂さん

そういう時はどんな生まれのどんな経歴の人だってしんどいよね。
悩むよね。

そこで彼らも成長していく

人生の帳尻があっていく

他人から尊敬されるには

ーー尾身先生は、どんなリーダーや個人が尊敬されると思いますか?

尾身茂さん

不完全なんだけど、その中で与えられた条件の中で精一杯、誠実に生きる人。

そんな人はどんな場所で、どんな仕事についていても尊敬されるのではと思います。

私も、あなたも、いろいろなリーダーたちも、みんな人生の条件を与えられている…と私は思っています。

しかも、その条件は自分では決められない。

そんな条件のもとで、

自分のためだけに生きるのか

誰かのためにも何かやるのか

ということが大事なんだと思うのです。

この「全世代に感情力を育む会」
……ここに集まった皆さんが社会のためになにかをやる。

一人のためにでもなにかやる。
できれば多くの人のためになにかやりたい。

そう思って、不完全ながら行動しはじめることがその人間の価値を決める

…と、私は思うのです。

そこには社会的に偉いとか偉くないとか関係ないのです。

そういうふうに周りを見ると、他人を見る目がちょっと違ってきますね。

ーー今、尾身先生を前にして「偉い人だから緊張しないと」と思ってます。

尾身茂さん

あなた、緊張なんかしてないじゃない(笑)

ーーしてます!してます! 参加者の皆さんも絶対緊張してるはずです。
だから、今の先生のお話しを聞いて、なるべくなくしていこうと…

いやいや(笑)

つまり、あなたは私や遠藤先生に緊張するってことだけど、それは、私も遠藤先生も皆さんより年齢が上です。

その分、いろいろ経験もしてるし、本も読んでるし、本も書いてます。


でもね、そういうのは仕事だからね。

つまり、その人間の社会の中での役割なんですね。

たとえば、遠藤先生が本をお書きになって、子ども達、若者が元気になっていく社会に近づく…

これは社会から期待された役割として、遠藤先生は果していらっしゃるわけです。

私は運命論者ではありませんが、天からそれぞれ求められているものは人によって違うと思っています。

人間というのは社会の中で生きていく社会的動物で、社会的動物ということは、環境と周りの仲間に影響したり、助けたり、助けられたりすることに重きを置いている存在です。

だから、

自分で何かを貢献した、自分のことで何かしら人が喜ぶ、自分の存在が人のために役立ったという感覚

この感覚を持ったほうがいいと思うのです。そのためには、いろいろなことをして、

自分が何をすれば、他人から喜んでもらえるかを知ること

それが大切だと感じます。

自分が何をすれば他人から喜んでもらえるか

尾身茂さん

例えば「自分はノーベル賞学者にはなれないけど、刀鍛冶として刀をつくる、刀を研ぐことは得意だな」ということはある。

いっぽう学者のほうも「自分は刀はつくれないな…」
でも「新しい元素を見つけて美しい刀の素材をつくりたいな」ということもあるでしょう。

人間は社会的動物なんだから、社会的に分業して生きていくんだから、それでいいと思うのです。

みんながみんな、長澤さんみたいに人前で話しができなくてもいいですよね。

そうでしょ?(笑)

檻の中から出ていくには

尾身茂さん

自分の存在が人の役に立つのは、どの分野の、どんなことなのか?

それを見つけるのには当然それなりに時間がかかる。
経験も必要だ。自分以外の視点も必要。

だから、高校で「大学に行って何をするのかを早く決める」とか、そういうことよりも、いろいろなことを経験する事が大事だと思うのです。

自分が入っている檻を越えて、いろんなタイプの人で出会い、本を読んで、遊んで…

そういう営みの先に自分という存在を自分の中で相対化し、感情力を磨いていく…

その先に

自分という存在が人のために役立つのは、どの分野なのか、どんなことなのか?

の答えはある‥‥と思うのです。

そして丁寧にそういう営みをしていたら、一年、二年なんてあっという間です。

そして、その一年、二年が遅れるとかどうとかは人生全体から見たら決定的なことではありません。

もっと失敗してもいい社会へ

尾身茂さん

そこで、皆さんへサジェスチョンがあります。

今までの「全世代に感情力を育む会」で学んだ内容、そして今までたくさん長澤さんから学びをもらう中で、若い皆さんが今置かれている状況は、一応わかっているつもりです。

ですが、”人生100年時代”と言われている現在、そんな一年、二年のことで悩まずともいいし、もっと失敗を経験してもいい…と思うのです。

もちろん、我々が「失敗してもへっちゃらだ」「一年、二年のことで悩まず、行動していこう」と思えるように個人的な成長をしていくのも大切ですが、

そして同時に(長澤さんも言っていましたが)社会側も改善していくべきところもあるでしょう。

社会が皆さんに「はやく進路を決めて!決めたら、はやく結果を出して!」と焦らせている…

それは社会側も少しずつ変わるべき部分かもしれません。

ありえる

尾身先生の「その人が、天から求められているものがある」というお話は、平たく言えば、その人の強み、もっと言うとミッションとも言い換えられるのかなって感じました。

そして、「それを急ぎ見つける必要もない」「いろいろ失敗してもよい」というのはおっしゃる通りだと思います。

我々から見た、コロナ渦だったころの尾身先生の活動は、天から求められた役割みたいなものだと思っています。

でも一方で、尾身先生ご自身は、あれは予期してなかった役割の一つだったのかなとも思うんです。

ご自身からその役割を引き受けにいったという部分もゼロじゃないんだけど、その役割を目的として、逆算して行動していたわけじゃない…

むしろ、先生自身も思わぬところに天から役割が降ってきてんじゃないかと。

そう考えると、ある時に「これが自分の役割だ」と気づく・見つけるようなことが起こるんじゃないかなって思うのです。

そして、その「これが天から求められているもの」は、焦って見つける必要はないということですね。 

尾身茂さん

そう。一年、二年で見つかるわけではないし、自分だけの力でどうにかできることでもなく、時代、環境、ご縁、もっといろんなものの総合的なもので決まるものだと思うのです。

ここに集まっている皆さんの顔を見ると、皆さんが今、成長しつつある、もっと成長していける…と確信しています。
もちろん、ここから、いろいろ失敗もするだろうし、大変なこともあるでしょうけど(笑)

人は他人のことは変えられない。変えられるのは自分だけだと思うのです。

個々人が自分を変えていくこと。この積み重ねが世の中を作っていく…

 私たちは今の日本の環境、それを与えられて、その中で生きています。

 一方、その環境、つまりこの社会はスタティック、静的なものではないはずなのです。

社会が我々の行動やありかたを規定しているように、我々自身も、環境であるところの社会を作っている部分はあります。

つまり、

 我々と社会が相互作用している、そのダイナミズムがある

ということなのです。


私は、この会で、 皆さんと議論する中で、 まだ言語化ができてない、そのダイナミズムの部分をもっと言語化していきたいと考えています。

以上です。これからも皆さんといろいろと話すのを楽しみにしています。

編集後記

尾身先生からのお話からは、彼ら個々人のポテンシャルが解放されていくことで、私達全員を取り巻く環境=社会が変わっていく…この相互作用のダイナミズムの存在を意識することの大切さを感じました。

(本記事で解説したように)デリケートなZ世代こそが今後の組織を支える「やわら人材」となる可能性を秘めています。

マネジメント側/大人たちは、デリケートなZ世代の彼らが囚われやすい「自己閉塞」という檻を越えて、彼らが羽ばたくことができるよう、彼らの内側の世界観を理解し、サポートして、彼らが自然と持っている「観察力」と「共感力」というポテンシャルを解放してもらう…

そして、もう一つ尾身先生のお話しから感じたのは、冷静かつ温かい人間観です。

どんな人にも天から与えられた役割はある。
どんな人にも差異はあって、そして誰しも完璧ではない。皆お互い様の存在。
そしてどんな人も長い人生の中で変化していく。足らずの部分もいつか帳尻が合うよう成長と変化をしていく…

この”人間観”を大切にしていこうと感じました。

尾身先生の人間は不完全だから失敗する。そこから学んでいくのが人生という言葉に胸に、ビーンズはこれからも若者たちの「失敗」と「成長」の物語に伴走し続けます。

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この記事を書いた人

長澤 啓のアバター 長澤 啓 ワカサポ編集長/悩める20代社員育成の専門家
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