【第5回】「私がいると皆さんに迷惑なので退職します」 ── Z世代社員のしんどさの“根っこ”とは?

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目次

はじめに

仕事柄、大学生やZ世代社員の方が、自分がいま所属する組織を辞めようとしている際に送るメール文をよく見ます。
そんなメール文のメッセージにはよく以下のような内容が含まれています。

私がいると(優秀でやる気もある)他の皆さんに迷惑なので退職します

「あなたにかけてきた採用・育成コストやあなたに任せている仕事とかを考慮すると退職される方が圧倒的に迷惑なんですけどおおお!」

「てか、あなたは新人なんだから迷惑かけてなんぼでしょ!」

って突っ込みたくなってしまいますよね……

最初は「自分がスムーズに退職するための方便だろう」と思っていたのですが……

上記のメッセージを送ってきたZ世代と実際に何度も対話して、「いや、これ方便というには複雑だぞ……」ということがわかってきました。

そして、多くのZ世代たちをヒアリングをしていくなかで判明したのが、Z世代社員が本気で

自分は周りに迷惑をかけているから退職しなければならない。
さもなければ、周りから嫌われ、つまはじき者にされてしまう!

と考えている場合が少なからずある、ということでした。

なので、周りを気遣っている風で、実は「自分の心ファースト」な発言であるというわけです…… 
まさに「自分のことで頭がいっぱい」な自己閉塞(↓)ゆえの行動ですね。

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さて、それにしてもなぜ「迷惑だから退職」という結論にいたるのでしょうか?
今回の記事ではZ世代社員が「皆さんに迷惑なので退職しなきゃ」と思い詰めるに至るメカニズムについて解説します。

↓↓本シリーズの記事のまとめ↓↓

長澤啓(Nagasawa kei)
東京大学経済学部卒。1997年生まれ。
大企業・大企業の組合幹部向けの研修(ダイジェスト動画)・コンサルティングで、「Z世代社員の定着と活躍」のコツについてお伝えしている。長澤の取り組みについて詳しくはコチラ
不登校支援専門塾である「学習支援塾ビーンズ」の塾長/副代表も務める。

↓前回記事

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4つの行動類型その2:恥回避

自発的関係外志向かつ「他人を道具扱い」の行動類型は「恥回避」です。

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自発的関係解消

自分は相手を道具として関わっているからこそ、
相手も自分を道具として関わっていると感じている自己閉塞人がこの行動をとります。

自分が相手から道具として扱われて関係解消(無視or切り捨てor廃棄)される前に、
自分が相手を道具として扱って関係解消を選択する行動です。

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道具のフローについての復習 詳しくはコチラ

「自分は相手や集団から関係解消されるのではないか……」と少しでも疑念を感じてしまうと、
関係外に至るタイミングや過程を制御するために、自分から先に関係解消をしようとするのです。

多くの場合、

「あなた(と組織)にとって私の存在は迷惑だと思う。申し訳ないから、あなたとの関わりを断ちたい or 組織から抜けたい」

という発言とセットで自発的関係解消が行われます。

このとき、相手や集団から、「お前の存在は迷惑だ!」と実際は言われていないのに、このような行動をとってしまうということがポイントです。

Z世代社員の例は本記事の冒頭で述べましたので、
Z世代社員と地続きの心理構造を抱える10代についても確認してみましょう。

私が塾長を務める不登校支援専門の塾、学習支援塾ビーンズ(↓)では

生徒が以下のような自発的関係解消行動をとります。
(本当に一例しかないのですが、この一例に集約されます)

さきほどまで自分も楽しんでいた生徒同士の集まりを途中で退席する。

次に「自分がいては、みんなに迷惑であると考えた」(客観的に見ると根拠はない)と講師に強く伝え、
「私がいては迷惑だから二度とこの集まりには参加しない」と強く主張する
(小学生から高校3年生まで多くの事例)

また、自発的関係解消行動をとる自己閉塞人は、他人をひたすら自発的関係解消する中で、以下の2つの方向性を志向します。

1つ目は、
「自分一人で生きていく!」と強固に主張し、
「一人で何もかも全てやって、一人で食べていく。」(※1)という「一人親方」(※2)を志向するという方向性です。

※1
そもそも他人への完璧主義行動を併発している場合も多いので、気の合う人の存在には期待しません。また、期待していたとしても、「向こうから声をかけてきたら、話してやらないこともない」「ただ、自分から積極的に関係を構築しようとはしない」「気が合ったとしても、たまに話すくらいでいい」という極めて消極的な構えをとります(もちろん、この構えでいる限り、気の合う人を見つけられる可能性はかなり低くなります)。

※2
詳しくは次回以降の記事で説明します。

2つ目は、
次回記事で説明する行動類型、「埋没」を志向する方向性です。
すなわち、そもそも誰の目にもつかないようにひっそりと生きていこうとするのです。

これは大学生やZ世代社員にも多いですね……

言うまでもありませんが、

恥回避行動をとっている自己閉塞人に対して、
「そうですか。(あなたはめんどうな性格だし)あなたの関係解消行動は止めません。」などとあっさり関係解消してしまうと、
自己閉塞人は「私には道具として便益がなく、それゆえ遅かれ早かれ相手から関係解消されたのだ」と傷つき、
「私は人間の集団の中で便益を提供することができず、関係解消されたのだ」とさえ思い込み、
(本当は本人から関係解消したとしても)トラウマとして強く記憶してしまいます。

破壊

(今日のメインディッシュは終わりましたが、恥回避に分類される行動は他にもありますので、少し紹介させてください)

自己閉塞人自身が

「道具として最高の便益を提供してくれるorしてくれそうである」

という認識を相手に持っていたにも関わらず、
そのかりそめの安心感・期待が裏切られたときに、
「破壊」と呼ばれる行動をとってしまうことがあります。

代表的な「破壊」は以下の5つのステップで発生します。

上司などの上位者から正論を伝えられる
「攻撃された!」と傷つきつつ、その場では受け止めようとする
時間がたつと、正論を伝えてきた大人への怒りがこみあげてくる
耐えきれずに、正論を伝えてきた大人とは別の大人に自分の怒りを吐露する
怒りを吐露してしまった自分に罪悪感を感じ、元気がなくなり、チームと関係解消する

特に注目して欲しいのは、③~⑤です。

まず③について。
ポイントは、「時間がたつと」という点です。

正論を伝えられてから数時間後に、ベッドの中に入ってから怒りがこみあげてくることもあれば、
数ヶ月後に思い出したかのように怒りがこみあげてくることもあります。

次に④について。
ポイントは、正論を伝えてきた上司ではなく、別の上司に自分の怒りを吐露することが多いという点です(もちろん、その上司本人に伝えることもあります)。

自分の内面のドロドロをそのまま言葉にして、自分で直接伝えにいくのは怖い……
でも、正論を伝えてきた大人に「やり返したい!」という思いもある……

だからこそ、正論を伝えてきた大人を叱ってくれそうな別の大人に頼ることになります。

また、「怒り」がベースなので、かなり感情的な文章・口調になってしまい、
聞いてる相手からの印象が悪くなってしまうところが悲しい点です。

最後に⑤について。
これが一番重要です。

大体の場合、④で噴出された怒りが成就することは少ないです。
そもそも、大人の正論が社会の中ではまっとうな場合が多いからです。
また、怒りを吐露した自分自身にも、「他人のことを悪く言ってしまった自分が恥ずかしい……」という自己嫌悪が襲いかかります。


結果として、怒りを吐露したことで、逆に元気がなくなってしまい、チームから去ってしまいます。
なお、このような破壊行動を「スーパーノヴァ」と呼んでいます。

寿命を迎えた星が一瞬だけ凄い輝きとともに爆発し、その後急速にエネルギーダウンしていく様子が似ているからです。
(詳しい対応法は研修でお伝えしています)

さて、破壊が発生する理由を解説します。

相手が道具としての価値がなくなれば、「廃棄」すればいいだけの話に見えます。
しかし、あえて自分からその道具(相手)を壊すことで、
廃棄されるという結果は変わらないものの、道具を制御できた気になります。(※)

※この理屈でいくと、別れた相手を殺害してしまうスト―カーの行為も破壊といえるのでしょうか……?

ですから、例え一度きりの関係であったり、
そのまま距離をとるだけで良い関係であったりしても、
自己閉塞人は執念深く、④を行ってくることもあるのです。

恐ろしいのは、人に自分の意見を言うことを極端に恥ずかしがるような人でさえ、凄いエネルギーで破壊を行うことがあるということです……

おわりに(次回予告)

ここまでお読みいただきありがとうございました。

↓↓↓次回記事↓↓↓ のテーマは「埋没」

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次回のテーマは「埋没」

具体的には、一部のZ世代社員の

褒められるのが怖い……

という思考について解説します!

また、Z世代社員の離職防止や活躍に向けた各種サービス(研修・コンサルティング)も提供しておりますので、下記資料の下の問い合わせフォームから是非お声がけくださいませ。

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この記事を書いた人

長澤 啓のアバター 長澤 啓 ワカサポ編集長/悩める20代社員育成の専門家
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