【第6回】「褒めないでください」「期待しないでください」──Z世代社員のしんどさの“根っこ”とは?

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具体例から理解したい方はコチラ

こんにちは。Z世代社員育成の専門家、長澤です。

デリケートな(自己閉塞に陥っている)Z世代社員は、

「褒めないでください」
「期待しないでください」

といったことをしばしば口にします。

褒められる = うれしいこと

期待される = うれしいこと

という、多くの上司世代の方の「当たり前」とは真逆の価値観ですから、

混乱してしまいますよね…

さらに、

「競争したくない」

「責任を負いたくない」
(新入社員なんだからそもそも負っている責任などないのに…)

といった発言もよく聞かれます。

今回は、こういった発言の裏にある思いを、

道具的世界観(詳しくは↓)という独自の考え方を元に解き明かしていきます。

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長澤啓(Nagasawa kei)
東京大学経済学部卒。1997年生まれ。
大企業・大企業の組合幹部向けの研修(ダイジェスト動画)・コンサルティングで、「Z世代社員の定着と活躍」のコツについてお伝えしている。長澤の取り組みについて詳しくはコチラ
不登校支援専門塾である「学習支援塾ビーンズ」の塾長/副代表も務める。

↓前回記事

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目次

埋没

今までの記事で、

デリケートなZ世代の行動を

  • 支配  (前々回の記事で解説済み)
  • 恥回避 (前回の記事で解説済み)
  • 埋没 (今回の記事で解説)
  • 使用価値向上 (次回の記事で解説)

の4つに分類して解説してきました。

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今回のテーマは「埋没」です。

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最近の若者は褒められること・目立つことを忌避する」と言われますが、

これはまさにこの埋没行動であると言っても良いのではないでしょうか。

埋没行動は以下の3つに分類されます。

期待回避

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上図の復習はコチラから

正確に定義すると、「自分を道具として扱う他人が自分を認知外にカテゴライズするように仕向ける行動です。

道具とはいえ、既に関係があるものを失うよりも(関係解消)、
寂しいかもしれませんがそもそも関係を生まないようにした方(関係未生)が傷つきません。

ですから、

下手に期待されて無視や切り捨てや廃棄されるくらいなら、
最初から認識されないものとして振る舞った方が得のように見えます。

そして、自分が認識外にカテゴライズされるように仕向けるために、
空気を読んで目立たないようにします

この行動は集団の中でその集団の行動規範から逸脱した振る舞いをして、
周りから強く攻撃された(もしくは、攻撃された気になった)人がとりがちです。

Z世代社員や大学生にも、

「私はリーダーになりたくない」
「ずっとモブ(チームでの主要人道具以外の“その他大勢”)が良い」

としきりに言う人がいますが、
これも期待回避行動と言っても良いかもしれません。

なお、20代の問題と地続きである10代に関することにも触れておきます。
私が塾長を務める不登校支援専門の塾、学習支援塾ビーンズ(↓)の生徒の多くが集団の中で、

  • 自分から声掛けをしない
  • 自分から会話の切り口をつくらない

ことが多いのは、

生徒が期待回避行動をとっているからと言えるかもしれません。

ただし、極端に無口になることで、
認識外になるようにしているつもりが、
それが逆に目立ってしまって集団からより排斥されることもあるようです。

本当に心苦しい限りです。

使用サイクル回避

「褒められたくない・(特にみんなの前で)褒めないで欲しい」

という声をあげるなどの行為がこの行動に該当します。

消費された後、相手が便益を感じた場合、
再度期待されてしまい、
使用サイクルを周回することになる可能性が発生します。

この相手が便益を感じたということを明確にする振る舞いが「褒める」であり、
その「褒める」を否定することで、
相手が自分から得られた便益を否定することもできて、
使用サイクルを再び周回することを防げる(気になれる)のです。

競争と責任の回避

自己閉塞に陥っているZ世代社員に多く見られる発言として、

「競争したくない」
「責任を負いたくない」

が挙げられます。

どちらも、
「自分の使用価値の低さが露呈して関係解消されるくらいなら、認識外にいたい」
という思いが根底にあります。

まず、「競争したくない」という発言の意図を説明します。

道具の使用価値は比較可能で取り換え可能ですから、
道具の世界ではどうしても競争が発生します。

この構造から、競争を回避することで道具の世界から抜け出せるのではないかという推測が生まれます。

なお、自己閉塞人は道具の世界が全てですから、

「競争に敗北する」
は重大な精神的危機に直結します。

なお、

「競争したくない」と発言する自己閉塞に陥っているZ世代社員に

「あなたなら競争に勝てるよ!」

と励ましてもほぼ無意味です。

極端な例え話ですが…

「勝った人は100万円をゲットできる競争で、勝てる確率は99%だが、負けたら苦しみぬいて死ぬ。」
というゲームを想定しましょう。
いくら勝率が高くても負けたときのペナルティが大きすぎて、競争に挑みたくないですよね。

自己閉塞人にとって、競争に敗北することはそれくらいの代償を伴うので、
勝率が完璧に100%じゃない限り競争に挑めない傾向があるのです(それはそもそも競争とは呼べないかもしれませんが)。

次に、「責任を負いたくない」という発言の意図を説明します。

自己閉塞に陥っているZ世代社員は「責任」という言葉をどのような意味で使っているのかについて理解すると、
この発言する意図が分かりやすくなります。

彼らが使う「責任」という言葉の意味は、
他人が道具である自分を関係解消するリスク
です。

責任とは一般的に他人や組織や社会などの自分以外の存在に対して負うものとされていますが、
自己閉塞人にとっての責任は自分に向けてのものです(自分のことしか考えられない状態であることが自己閉塞のそもそもの定義でしたね)。

しかし、自己閉塞人にとっての責任は、
一般的な意味ではなく、
「他人が道具である自分を関係解消(捨てる)するリスク」(が上がる
であるということに注意しましょう。

さて、
「競争したくない」「責任を負いたくない」
といっても、社会の中で生活しなければいけません。

引きこもるという選択肢も考えられますが、これはこれでリスクが大きいので、
Z世代の自己閉塞人は「競争と責任があふれるとされる社会」に飛び込んでいきます(もちろん、嫌がりながらですが)。

競争と責任が避けられないのだとした場合、
競争と責任に伴う痛み(関係解消のリスク)を極限まで抑える方法は何でしょうか。

それは、
「自分の個性を活かした仕事をすることに過剰にこだわる」(※1)です。

ここでいう個性とは、「自分に先天的(※2)に備わった、他人にはない自分だけの使用価値」です。

※1
派生形として、「自分にしかできない仕事がしたい」というものもあります。

※2 【コラム】努力よりも地頭の良さをほめられたい東大生
過去に自身も東大生となり、他の東大生とも多く触れ合ってきた筆者の個人的な経験に基づく意見であることを前提として理解してください。
東大生が最も喜ぶ褒め言葉の1つに「地頭いいね」「勉強してないのに成績良いんだね」が挙げられると個人的に感じています。逆に「頑張り屋さんだね」「真面目だね」と言われることを嫌う傾向があると感じます。東大には自分と同等もしくは圧倒的に格上の知力を持つ人が多数います。もし、血のにじむような努力によって東大に合格したのだとすると、それらの人物と競争する土俵に来るだけで四苦八苦したことになり、「これからの競争に敗北しそうな人」として使用価値を認められなくなる可能性が高まります。ギリギリでオリンピックに出場した選手はメダリスト候補として注目されないことと同じです。しかし、今までの実績は努力せずに才能によって楽々達成したものであると示すことができれば、「東大の中での競争に勝てそうな人」として周りから使用価値を認められた気になれます。ですから、「地頭」という「個性」を重んじるのです。
このように、競争に楽に勝ち続けるためにはその競争に適した個性を持つことが必須であることを自己閉塞人は本能的に理解しているからこそ、「個性」「自分の強み」にこだわるのでしょう。
個性は、先天的であるがゆえに競争などを通じて獲得する必要はありませんし。

また、自分の個性は他人は持っていないはずですから、
競争も発生しませんし、
その希少性ゆえに関係解消される可能性も限りなく低くなります。

とはいえ、個性は先天的に備わっているものですが、それを見つけられるかどうかはまた別の話です。

なお、競争と責任回避行動をとる大学生が自分の将来の希望について発言する際、以下のようなものが多くなります。
最後に少しだけ確認しましょう。

なお、ほぼ全て筆者が大学生時代に発言していたことでもあります。

「私は参謀タイプです」

「参謀」は全体の戦略策定に関わるという点で自分の使用価値を感じられます。
一方で、責任は「大将」(組織のトップなど)がとってくれそうな感じがするため、大変都合が良いポジションに見えます。

しかし、純粋な「参謀」は研鑽に研鑽を重ねた高度に知的な人でない限り務まりません。
さらに、現場に赴き、責任も一緒に引き受けてくれる参謀でない限り、参謀というポジションにつくことはできないことが多いです。

ただ頭がいいだけの参謀と頭もよくて積極的に責任を引き受け、いざとなれば前線に赴いてくれる参謀、どちらの方が参謀として選ばれるかを考えてみれば明らかですね。

とはいえ、参謀を目指す時点で、少しは自信があるかもしれません。
本当に自信がないと、参謀ではなく、一兵卒を目指しますから。

余談ですが、コンサル業界が最近の就活生に人気なのは、このあたりに理由があるのかもしれません。

「人と人をつなげる仕事がしたいです」
自分には能力がないと考えているがゆえに、能力がある人と能力がある人をつなげることで使用価値を発揮したいという考えです。しかし、「人と人をつなげる」とは専門性と負荷の高い活動です。高度なファシリテーションスキルと多くの人にこまめなおせっかいを続ける力が必要とされるからです。また、いざとなったらひと肌脱いで責任を引き受けるくらいの胆力も必要とされます。いざとなったら助けてくれるような人でないと、人望が集まらず、人が寄ってきませんから。人が寄ってこないと、そもそも人と人をつなげることはできません。

なお、派生形として、「(ぼやっと)人材業界に行きたい・人事の仕事がしたい」というものもあります。

「がんばる人をサポートする仕事がしたいです」
自分にはやりたいことがなく、自分の能力にも自信がないので、既に自分のやりたいことがある人をサポートしたり、他人がやりたいことを見つけることを探す手伝いをしたいと考えて上記の発言に至ります。

がんばる人は、卓越したスキルがあり、いざとなったらひと肌脱いで責任をとることも辞さないマインドの人にサポートしてもらいたいと考えています。ですから、「責任を回避したい」と考えている人はがんばる人をサポートできません。

「メディアに就職したいです」(なお、それに向けた本気の活動はしない)
自分で何かを作り出すと責任が大きく感じますが、誰かが作ったもの(活動)を発信することはそこまで責任を感じずに済む気がします。

しかし、メディアの仕事は、そんなに生ぬるいものでないことは当然です。

なお、本当にメディアに行くことを望んでいるならば、自分が発信したいものを学生時代から発信していたり、メディアでの長期インターンやアルバイト(早朝からTV局でADのアルバイトをするなど)などの活動に邁進したりするはずですが、そういうわけでもありません。

「一人でやれて一人で成果を出せる仕事がしたいです(一人親方志望)」
「周り(同僚など)との競争を回避する」という動機で上記の発言をしているということがポイントです。

一人親方は、仕事上のミスや自分にはどうしようもない市場の変化なども全て自分で引き受けなければいけませんので、より苛酷な瞬間も多いはずですが、その現実は認識できていません。

なお、学習支援塾ビーンズの生徒に関しては、ここに、「誰とも話さずに(最低限のメールのやりとりだけ)」が加わることが多いです。

また、一人親方志望は別の行動類型でも再登場します。

さいごに(次回予告)

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回は、4つの行動類型の最後、「使用価値向上」について解説していきます。

学習支援塾ビーンズ

実は、今回の記事で紹介したようなタイプとは全く逆で、ぱっと見主体性とやる気にあふれているZ世代社員も多くいます。

例えば……

「社内MVPを絶対取りたいです!」
「私に色んな仕事を任せてください!」
「リーダーになりたいです!」

と熱く宣言するZ世代社員だっています。

ただ、そんな彼らも実は

「このくらい活躍しようとしなきゃ、“使えない道具”として捨てられてしまう……」

という深い恐怖心が根っこにあることもあるんです。

他にも、

  • あるはずもない完璧なマニュアルへの執着
  • 規則への盲従
  • 過度な謝罪

といった行動についても解説していきます。

↓↓↓次回記事↓↓↓

また、Z世代社員の離職防止や活躍に向けた各種サービス(研修・コンサルティング)も提供しておりますので、下記資料の下の問い合わせフォームから是非お声がけくださいませ。

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この記事を書いた人

長澤 啓のアバター 長澤 啓 ワカサポ編集長/悩める20代社員育成の専門家
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